陸軍武官進級令(大正5年勅令第199号)昭和2年勅令第207号による改正

提供:Shirakaba.link
ナビゲーションに移動 検索に移動

陸軍武官進級令(大正5年勅令第199号)

陸軍武官進級令(大正5年勅令第199号)昭和2年勅令第207号による改正時の条文


朕陸軍武官進級令改正ノ件ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム

御名御璽


大正五年八月十二日
内閣総理大臣侯爵大隈重信
陸 軍 大 臣 大島健一

勅令第百九十九號

陸軍武官進級令

第一章 總則

第一條 陸軍武官ハ級ヲ逐ヒ歴進セシム

第二條 陸軍武官ハ其ノ官ニ必要ナル實役停年ヲ超エタル者ニ非サレハ進級セシムルコトヲ得ス但シ本令中別段ノ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラズ

第三條 陸軍武官ノ進級ハ抜擢進級ニ依ル但シ本令中別段ノ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラズ

第四條 陸軍武官將校相當官各部准士官及各部下士ヲ除クノ抜擢進級候補ハ上官タル將校職權ニ依リ之ヲ選定シ其ノ上官タル將校選定ノ適否ヲ判定スルノ權ヲ有ス

將校相当官、各部准士官及各部下士ノ抜擢選定及判定ニ付テハ各部毎ニ前項ノ例ニ依ル

第五條 休職又ハ停職中ノ者ハ之ヲ進級セシメサルモノトス

但シ休職者ニシテ第二十條ノ二ノ規定ニ該當スル者ハ此ノ限ニ在ラズ

第六條 休職又ハ停職ノ期間ハ實役停年ニ算入セス

俘虜ト爲リ又ハ戰地ニ於テ生死不明ト爲リタル期間ニ付亦前項ニ同シ但シ正當ノ事由アルトキハ此ノ限ニ在ラス

第二章 平時進級

第一節 將校同相當官ノ進級

第七條 現役將校同相當官ノ各官ニ必要ナル實役停年左ノ如シ

中    將        四年
少將同相當官        三年
大佐同相當官        二年
中佐同相當官        二年
少佐同相當官        二年
大尉同相當官        四年
中尉同相當官        二年
少尉同相當官        一年

第八條 現役將校ニシテ兵科ヲ轉ジ又ハ兵科ヨリ部ニ轉ジタル者ノ實役停年ニハ其ノ轉ズル前ニ於ケル同級ノ官ノ實役停年ヲ通算ス

第九條 現役將校ハ尉官ノ階級ニ於テ三年以上隊附勤務ニ服シタル者ニ非サレハ大尉ヨリ少佐ニ、佐官ノ階級ニ於テ二年以上隊附勤務ニ服シタル者ニ非サレハ大佐ヨリ少將ニ進級セシメサルヲ例トス將校相當官ノ進級亦之ニ準ス

第十條 中將ヨリ大將ニ進級セシムルニハ歴戰者又ハ樞要ナル軍務ノ經歴ヲ有スル者ニシテ功績特ニ顯著ナル者ノ中ヨリ特旨ヲ以テ親任スルモノトス

第十一條 將官ヲ進級セシメ及大佐ヲ少將ニ進級セシムルハ上旨ニ出ツルモノトス此ノ場合ニ於テハ先ツ内旨ヲ陸軍大臣ニ諭スヲ例トス

同級ニ在ル將校相當官ノ進級ニ付亦前項ニ同シ

第十二條 削除

第十三條 削除

第十四條 現役將校同相當官ノ抜擢進級候補及其ノ列序ノ決定ハ上裁ニ依ル

第十五條 前條ノ決定アリタルトキハ陸軍大臣ハ上旨ヲ奏シテ抜擢進級候補決定名簿ヲ調製シ之ヲ上奏スヘシ

第十六條 現役上長官(大佐同相當官ヲ除ク)及士官ノ進級ハ抜擢進級候補決定名簿ノ列序ニ從ヒ陸軍大臣進級上奏ヲ爲スベシ但第十八條ノ二ニ規定スル場合ニ於テハ抜擢進級ニ依ラザルコトヲ得

第十七條 前條ノ規定ニ依ル進級ハ各官毎ニ之ヲ行フ

第十八條 停職者及陸軍將校分限令第六條第一項第五號ノ規定ニ依ル休職者ハ抜擢進級候補決定名簿ヨリ之ヲ削除ス

第十八條ノ二 現役將校同相當官ニシテ第十七條ニ規定スル實役停年ヲ超エタル者公務ニ因ル傷痍、疾病ノ爲危篤ニ陷リ又ハ現職ニ堪ヘザルニ至リタルトキハ其ノ際特ニ之ヲ進級セシムルコトヲ得抜擢進級候補決定ノ者及第七條ニ規定スル實役停年ヲ超エ多年軍務ニ服シ功績顯著ナル者現職ヲ退カシメラルルトキ又ハ傷痍、疾病ノ爲危篤ニ陷リタルトキ亦同ジ

第十八條ノ三 現職將校同相當官ニシテ軍事ニ關シ抜群ノ功績アル者又ハ軍人ノ龜鑑トシテ陸軍大臣之ヲ陸軍全般ニ布告シタル者ハ第七條ノ規定ニ拘ラズ臨時抜擢シテ特ニ之ヲ進級セシムルコトヲ得

第十八條ノ四 召集中ノ豫備役後備役將校同相當官ニシテ公務ニ因ル傷痍、疾病ノ爲危篤ニ陷リタル者ハ其ノ際特ニ之ヲ進級セシムルコトヲ得

第十九條 豫備役後備役將校同相當官將官同相當官及大佐同相當官ヲ除クニシテ軍隊官衙又ハ學校ニ武官ノ職ヲ奏シ勤務ノ成績優秀ナル者ハ必要ニ應シ臨時抜擢シテ之ヲ進級セシムルコトヲ得

第二十條 豫備役後備役中少尉同相當官ニシテ二回以上ノ召集ニ應ジ其ノ勤務ノ成績優秀ナル者ハ特ニ選抜シテ進級ノ爲ニスル勤務演習ニ服セシメ技能ヲ査閲シタル後臨時抜擢シテ之ヲ進級セシムルコトヲ得

第二十條ノ二 休職又ハ豫備役後備役將校同相當官ニシテ軍事ニ關シ抜群ノ功績アル者又ハ軍人ノ龜鑑トシテ陸軍大臣之ヲ陸軍全般ニ布告シタル者ハ其ノ技倆上級ノ職ニ堪フル者ニ限リ臨時抜擢シテ特ニ之ヲ進級セシムルコトヲ得

第二十一條 前四條ノ規定ニ依ル豫備役後備役將校同相當官ノ進級ニ關シテハ現職將校同相當官ノ例ニ依ル但第十八條ノ四ニ規定スル場合ニ於テハ抜擢進級ニ依ラザルコトヲ得

第二十二條 陸軍大臣ハ毎年將校同相當官實役停年名簿ヲ調製シ之ヲ上奏スヘシ

第二節 准士官下士ノ進級

第二十三條 現役准士官下士ノ各官ニ必要ナル實役停年左ノ如シ

樂   長   補    三年
曹長及其ノ同級ノ官    二年
軍曹及其ノ同級ノ官    一年
伍長及其ノ同級ノ官    六月

第二十四條 現役下士ニシテ其ノ兵科ヲ轉シタル者又ハ免官者ニシテ復官シタル者ノ實役停年ニハ轉科前又ハ免官前ニ於ケル同級ノ官ノ實役停年ヲ通算ス

第二十五條 削除

第二十六條 第十四條乃至第二十一條ノ規定ハ樂長補ヲ三等樂長ニ進級セシムルニ付之ヲ準用ス

第二十七條 現役下士ヲ進級セシムルニハ候補及其ノ列序ハ師團長、之ト同等以上ノ權アル長官若ハ陸軍大臣直轄官衙ノ長又ハ軍務局長、經理局長若ハ醫務局長之ヲ決定シテ抜擢進級候補決定名簿ヲ調製スヘシ

第二十七條ノ二 現役下士ノ進級ハ抜擢進級候補決定名簿ノ列序ニ從ヒ各官毎ニ(砲、工兵諸工長ニ在リテハ各兵科毎ニ且各階級毎ニ、編制上兵科ノ區分ナキ部隊ニ屬スル者ニ在リテハ各兵科ヲ通ジ各階級毎ニ)之ヲ行フ但シ抜擢進級ニ依ラザル者ニ在リテハ決定名簿ノ列序ニ從ハザルコトヲ得

第十八條ノ二及第十八條ノ三ノ規定ハ現役下士ノ進級ニ之ヲ準用ス

第二十七條ノ三 現役下士ノ進級區域及進級ヲ行フ諸官ハ陸軍大臣ノ定ムル所ニ依ル

第二十八條 第十八條ノ四乃至第二十一條ノ規定ハ豫備役後備役下士ノ進級ニ關シ之ヲ準用ス

第二十九條 前條ノ規定ニ依ル抜擢進級ニ關シテハ現役下士ノ例ニ依ル

第三章 戰時進級

第三十條 戰時又ハ事變ノ際ノ進級ハ前章ニ依ルノ外本章ニ依ル

第三十一條 補充上必要アルトキハ第七條及第二十三條ノ實役停年ハ之ヲ半減スルコトヲ得

第三十二條 補充上必要アルトキハ第九條ノ規定ハ之ヲ適用セサルコトヲ得

第三十三條 削除

第三十四條 削除

第三十五條 第十九條ノ規定ハ召集セラレタル豫備役後備役武官ノ進級ニ付之ヲ準用ス退役將校同相當官ニシテ國民軍ニ編入セラレタル者ノ進級ニ付亦同シ

第三十六條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ第二條ノ規定ニ拘ラス其ノ際抜擢シテ特ニ之ヲ進級セシムルコトヲ得

一 敵前ニ在リテ殊勳ヲヲ奏シ首將之ヲ全軍ニ布告シタル者
二 殊勲ヲ奏シタル者又ハ勳功顯著ナル者ニシテ傷痍又ハ疾病ノ爲危篤二陷リタル者

第三十七條 敵前ノ軍隊ニ在リテ人員缺乏シ定規ニ依ルコト能ハサルトキハ前數條ノ規定ニ拘ラス特ニ進級セシムルコトヲ得

第三十八條 戰地ニ臨ムノ首將ニハ特ニ進級セシムルノ權ヲ假スコトアルヘシ

本令ハ大正五年八月十五日ヨリ之ヲ施行ス但シ第九條ノ規定ハ大正九年十一月一日ヨリ之ヲ施行ス
陸軍豫備役後備役武官進級令ハ之ヲ廢止ス

(大正10年勅令第56号)

本令ハ大正十年四月一日ヨリ之ヲ施行ス

(昭和2年勅令第207号)

本令ハ昭和二年七月一日ヨリ之ヲ施行ス